21世紀に世界経済を席巻すると言われるBRICs(ブリックス)4ヶ国。その中でも、世界第3位の経済力を誇るようになると見られるインドは、かつて滅亡を経験し、英国の長い支配の中で苦しみ続け、独立達成後も流血に苦しみ続けた国であった。そんなインドが、いかにして現在のIT大国としての地位を築き、21世紀への輝かしい未来への道を開いたか。独立の志士たちの苦しみと栄光、そしてインドの将来について、書いた。
スポンサードリンク
16. 世界の市場としてのインド
インドには今だけでも、3億ちかい新興中産階級が存在するという。
もちろん、ほぼ同数が存在する貧困層も無視できないが、インドが極端な放任主義を取らないかぎり、中産階級の増加と購買力増加は、経済を底上げし税収を増やすことによって福祉財源も強化することになるから、悪い話ではない。このインドの消費生活を牽引する中産階級の数は、2010年までに10億を超すという見方もある。
ともかくも、今だけでも10億人を超える人口を抱えるインドには、働き盛りの労働人口が当面増えることはあっても減ることはない。
2025年、日本の20~39才の人口はわずか2400万人。たいして、インドはおよそ4億人超。これは、単純に就労人口が多いというだけを意味しない。人口と経済の相関関係を解説した経済学説のなかに、単純に40代の人口が多ければ多いほど、その国の景気が良くなる、とされる。それは40代前半が、教育費や住宅ローンその他で一番支出が多くなるからだという。そう考えると、上記の人口構成も、やはりインドの消費人口の増加と景気上昇の材料として考えられる。
すでにウォールマートなどの米大手も、インドの国内市場目当ての進出をはじめている。
また月賦割や消費者金融、クレジットカードの普及なども、国内での消費を刺激している。
たとえば、二輪車の普及者がいちじるしく、またそうした二輪車層が乗用車へステップアップすることから、当面のあいだ減ることのない乗用車市場が広がっているという。実に600万台ちかい二輪車市場が存在し、それらの今後の伸びも期待できる。
携帯電話・電子レンジ・発電機・コンピューター・カラーテレビ・電気洗濯機・ミニコンポなど、生活様式のへんかから、こうした製品への購買意欲が大幅に増加している。
くわえて、小売業が主体であったインドの流通形態も、やがては大型量販店にとってかわられるだろういう。ただし、相当規模の量販店が進出をはたしても、インドの広大な市場を席巻するにはそうとうな時間がかかる。この分野も、ながいながい成長が期待できる。
こうした消費生活・流通形態の変化は、下記のような変化を呼ぶ。
第一には、流通経路の整備によるさらなる景気向上。これは、たとえば電話通信の整備、道路建設・整備、鉄道建設、トラック等の需要拡大、国内航空の拡大といったかたちであらわれる。物がうごけば道路がいる、道路をつくるればトラックがいる、とお金が流れ続ける。すでに首都デリーでは総延長260キロ近い規模の地下鉄整備が始まっている。完成予定は2021年である。その過程でも、完成移行でも、景気を刺激し続ける好要因となると思われる。
また、資本の集中と、それにともなう大規模な投資があげられる。これは製造業では、新興財閥のかたちですでにあらわれはじめている。また金融業の発達も、大規模な投資を誘引する要素となるだろう。こうして貸す金が増えれば、さらに人々は消費を増やしていくと思われる。それが単純にいいことかわるいことかは別として、だ。
またこうした変化は、サービス業の増加を呼んで、包装その他の単純作業の製造業とともに、よくも悪くも貧困層の雇用の受け入れ先になると思われる。
もちろん、経済格差が拡大していく懸念もあるし、それは避けられない問題でもあるだろうけれど、とにもかくにも誰もが飢えないという状況を実現していくのが第一の課題だろう。
とにかく、こうしたまだまだ商品に飢えた広大な市場と、そうした流通をささえるための重厚長大産業の発展が、市場としてのインドの魅力をかなり長い期間にわたり支え続けるのは間違いがない。
それは同時に、インド人のライフスタイルや伝統が大きく変化していく過程でもあるだろう。
それが伝統文化の破壊となるか、それとも新しいライフスタイルへの発展となるか、いまわれわれはその視線をはずすことなく、インドの変化を見守り続けるだろう。
